こどもの便秘

便秘とは

便秘とは本来、スムーズに排出される便が腸に滞って排便回数や便の量が減る、または排便するために過度のいきみや苦痛が伴うなど便が出にくい状態が便秘とされます。
便秘によって、腹部の痛みや不快感、排便の際の痛みや出血などがあり、治療が必要な状態が便秘症です。便秘は放置していると悪化して慢性化しやすく、進行すると治すのに時間がかかるようになってしまいます。
生活の質を低下させ、多くの疾患の原因にもなりますので、「もしかしたら便秘かも」と感じたらお気軽にご相談ください。

便秘の種類

発熱時や胃腸炎が治った後などに生じる一過性の便秘と、症状が続く慢性の便秘に分けられます。また、基礎疾患が原因で生じている器質性便秘と、それ以外の機能性便秘(特発性便秘)に分けることもあります。器質性便秘は解剖学的異常など原因疾患が確認できますが、機能性便秘は確認できないことから、国際的な基準を元に診断されます。小児の便秘は、新生児・乳幼児と学童期・思春期では診断基準が異なります。

慢性機能性便秘症の
診断基準

国際的に広く使われている小児の便秘の診断基準です。

新生児・乳幼児

4歳未満の小児が対象
下記の項目の2つ以上の症状が1か月以上あること

  1. 排便が1週間に2回以下
  2. 過度の便貯留を起こしたことがある
  3. 痛みを伴う排便、または硬い便通を生じたことがある
  4. 太い便がでたことがある
  5. 直腸に大きな便塊がある

トイレットトレーニングを終了した児では、以下の追加の項目を用いてもよい

  1. トイレで排便できるようになってから、週に1回以上の便失禁
  2. トイレが詰まるほどの量の便をしたことがある

随伴症状(中核症状から派生して
起こる症状)

  • 易刺激性(イライラやかんしゃく)
  • 食欲低下
  • 早期膨満感
  • 大きな便の随伴症状は速やかに消失

学童・思春期

4歳以上の小児が対象
下記の項目の2つ以上の症状が、1週間に1回以上起こることが、1ヶ月以上続いており、過敏性腸症候群の基準を満たさないこと

  1. 4歳以上の発達年齢の小児で、トイレでの排便が1週間に2回以下

  2. 週に1回以上の便失禁
  3. 便を我慢する姿勢をとる、または自発的な便の貯留を過度に行ったことがある

  4. 痛みを伴う排便、または硬い便通を起こしたことがある

  5. 直腸に大きな便塊がある

  6. トイレが詰まるほどの量の便をしたことがある

こんな症状も便秘です

  • 排便を嫌がる、我慢している

  • おならが多い、おならの匂いが強い

  • 下着が汚れていることがある

  • トイレを嫌がり、おむつに排便する

  • 粘度の高い便が少量、または塊になって出る
  • 発熱や病気がないのに食欲がない

など

診断

上記の基準を元に診断されますが、基準を満たさない場合でも排便に苦痛を伴う場合や残便感による腹痛などの症状がある場合などは治療対象となります。なお、疾患の症状として便秘が起こっている場合には、原因となっている基礎疾患の専門的な治療が可能な高度医療機関をご紹介しています。特に下記の症状や既往がある場合には速やかな治療が必要になります。疑わしい場合にはお気軽にご相談ください。

など

治療

便秘と診断されたら、最初に便塞栓(便の詰まり)の有無を確認し、便塞栓がある場合には浣腸などを行って解消させます。
排便習慣や運動を含む生活習慣の改善、食事療法、そして必要に応じた薬物療法を行います。薬物療法では漢方薬の処方も可能であり、西洋薬と漢方薬の併用もできます。

生活・排便習慣

正しい排便習慣を身に付けることも重要です。便意が起きたらすぐにトイレに行く、朝食後はトイレに行く時間を確保するなどを続けていくことがスムーズな排便につながります。適度な運動を習慣付けると血行や代謝が改善して腸の働きも正常に戻りやすくなるとされています。
なお、幼児はトイレトレーニングをきっかけに便秘を悪化させることがあります。叱るのではなく、見守りながら、トイレに座っている時間が長くなったなど、できるようになったことを見つけて、しっかり褒めてあげましょう。トイレが嫌いという場合は、おもちゃや本を持ち込んで楽しい時間を過ごせるようにしてトイレを好きなスペースにしてあげてください。

食事療法

食物繊維の多い食品を積極的に取り入れた栄養バランスの良い食事を1日3食、規則正しく摂るようにしてください。ヨーグルトなどのプロバイオティクスも摂取して調子が良いのであれば続けてもらって構いません。水分が明らかに不足している場合にはこまめな水分摂取が必要ですが、特に問題がない場合は水分摂取を神経質に行う必要はありません。

薬物療法

年齢や症状、状態などに合わせて、浸透圧性下剤、刺激性下剤、消化管運動賦活薬、漢方薬などを処方しています。一般的な薬と漢方薬の併用も可能です。

浸透圧性下剤

腸管内の水分を増やして腸管の内容物を軟らかくして量を増やし、その刺激によって便通を促進させる薬です。マルツエキス、ラクツロース(モニラック)、酸化マグネシウムなどがあり、2歳以上の場合にはポリエチレングリコール(モビコール)の処方も可能です。

刺激性下剤

大腸を刺激して排便を促す薬で、 ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン) があります。効果が強く現れてしまうと腹痛を起こすことがありますので慎重な処方を行います。

消化管運動賦活薬

学童期以降に処方が可能です。代表的なものにモサプリドクエン酸塩(ガスモチン)があり、錠剤以外に散剤もあります。

漢方

大建中湯、小建中湯、大黄甘草湯、調胃承気湯、桂枝茯苓丸などを処方しています。

赤ちゃんの便秘

乳児排便困難症

生後6か月未満の赤ちゃんで、特にうんちが硬くないのに何日も排便がない状態です。排便の際に直腸と肛門の連携がうまくとれず、肛門を開くという一連の動きがスムーズにできないことで生じています。いずれ自然に改善することが多く、将来の便秘につながることもありませんが、マッサージや肛門刺激などでも排便がなく、おなかの張りが強い場合や食欲が低下しているなどがありましたら当院を受診してください。

稀少排便

母乳栄養児では排便回数の個人差が大きく、生後1か月以内を中心に1週間1回程度の排便しかない稀少排便を生じることがあります。基本的に便が軟らかく、しっかり母乳を飲んでいて、機嫌も良ければ健康上の問題はなく、将来の便秘につながることもないとされていますので、経過観察します。

よくある質問

便秘があって受診が必要な症状は具体的にどんなものがありますか?

下記のような症状がある場合は治療が必要な基礎疾患や、便秘治療が必要なケースが多いので受診してください。また、排便に痛みや不快感が伴うと便意を我慢して便秘を悪化させやすい傾向がありますので、便秘かもしれないと感じたらお気軽にご相談ください。

便秘は治療が必要ですか?

おなかの張りや残便感、排便時の痛みなど便秘は不快な症状を起こします。排便がつらいことで排便を嫌がり、便秘を悪化させてしまうことも多くなっています。便秘が解消することで、生活の質は大きく向上します。また、お子様も排便や便秘症状といったストレスがなくなることで、のびのびと楽しく過ごせるようになります。

便秘は思春期以降になるものだと思っていましたが、乳幼児でも便秘になりますか?

小児の便秘は全体の1割程度、学童期には2割程度にみられると言われており、乳幼児の便秘も珍しいものではありません。またトイレトレーニングをきっかけにトイレが苦手になり、便秘になるケースもあります。初めての子育てでは赤ちゃんの便秘に戸惑いを感じる方も少なくありません。排便は内容や頻度にも個人差があり、生活習慣や食事の影響も大きく受けますので、わかりやすい目安はありませんが、当院では乳幼児を含むお子様の排便に関する不安やちょっとしたお悩みにもしっかり対応していますので、気になることがありましたら気軽にご相談ください。

こどもが便秘になりやすいタイミングはありますか?

母乳からミルクに切り替えた、離乳食を始めた、トイレトレーニング、幼稚園・保育園などの集団生活などをきっかけに便秘になることは珍しくありません。生活に変化が生じた時期には排便がスムーズかどうかを注意してみてあげましょう。

理想的な便はどのくらいの硬さですか?

バナナの硬さが理想とされていますが、表面に少しヒビが入る程度の硬さから、半固形程度の軟らかさまででしたら問題ありません。

こどもの便秘の治療も小児科でできますか?

小児科や小児外科でしたら基本的に対応が可能ですが、クリニックのホームページで便秘治療に対応しているかを確認してから受診するようお勧めしています。当院でもこどもの便秘治療を行っていますが、診察の結果、便秘が基礎疾患の症状として現れている場合には専門的な治療が可能な高度医療機関をご紹介しています。

治療ではどんなことを行いますか?

適切な治療のために、便の硬さや排便頻度を記録した日誌を記入いただき、その上で排便習慣を含む生活習慣の改善、食事療法、薬物療法などを行っていきます。薬は症状や年齢、状態に合わせて処方し、漢方薬の併用も可能です。錠剤・シロップ・坐薬など、薬の選択肢も多くなっています。

治療期間はどのくらいになりますか?

便秘症以外の疾患がない場合には、治療開始から1週間から1か月程度で効果を実感できるケースが多いです。服薬中止の目安は年齢によって異なりますが、乳児期では1歳以降独り歩きができるようになる頃(腹筋が発達して上手にいきめる)、トイレットトレーニング前の幼児期ではトイレットトレーニング完了後、トイレットトレーニング完了後のお子さんでは小学校生活など新しい生活に慣れてきた頃、以上の時期を目安にゆっくり減量中止していきます。ただし便秘は再発しやすいことから、完全に治して再発しないようにするためには年単位の治療が必要になるケースも少なくありません。まずは貯め込まない排便習慣をしっかり身に付けることが重要です。

食事をはじめ生活習慣の改善のポイントはありますか?

お子様の便秘では、運動や水分摂取に問題があるケースは少ないので、過度な運動や水分補給を神経質に行う必要はありません。食事は成長のために欠かせない栄養バランスを重視することが重要です。食物繊維は納豆や枝豆、雑穀やイモ類、リンゴ・ミカンなどからお子様の好きなもので摂るようにしてください。

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