長引く咳

こどもの咳の症状

こうした咳の症状の多くは、呼吸器感染症ですが、長引く場合は気管支喘息、副鼻腔炎などの可能性があり、継続した治療が必要となることがあります。気になる咳がありましたら、お気軽にご相談ください。

咳の症状を起こす疾患

こどもの気管や気管支は細く、ちょっとした刺激でも咳が出やすい傾向があります。発熱や鼻水などの症状を伴うことも多いので、他の症状の有無を確認することも重要です。なお、他に症状がなくても咳が続いたり、気になる咳をしている場合にはお気軽にご相談ください。

風邪

ウイルスが鼻・咽頭に感染することで炎症を起こしている状態です。季節ごとに流行するウイルスが様々あるため、1年を通して見られます。数日の潜伏期間があって発熱、のどの痛み、鼻水などの症状を起こし、次いで咳が現れるという経過を辿ることが多いです。発熱は1~3日程度で収まりますが、鼻水、咳は1~2週間程度続くこともあります。風邪のほとんどは去痰薬などの対症療法で自然に軽快します。

クループ症候群(喉頭気管炎)

ウイルスが喉頭に感染して腫れるため、のどがこすれるような「ケンケン」という特徴的な咳が出ます。オットセイの鳴き声に似ていると表現されることもありますが、いつもの風邪とは違う咳、のどが痛そうな咳と表現される親御さんもいます。6か月から3歳までの乳幼児に多く、気道が腫れることで狭くなり、呼吸困難を起こす危険性がありますので、こうした咳に気付いたら速やかに受診してください。病院ではのどの腫れを取る吸入をしたり、ステロイドの内服薬を処方します。なお、夜間に特徴的な咳が収まらない、顔色が悪い、咳で眠れない場合などは速やかに救急外来を受診してください。

急性副鼻腔炎

鼻水が内側からのどに直接流れ込んでしまうため、痰がからむような湿った「ゴホゴホ」いう咳を生じます。就寝中は流れ込みの増加のため咳が悪化することがあります。副鼻腔炎の60%は経過観察で治るため、白っぽい鼻水で、症状が軽い場合には少し様子をみても大丈夫ですが、発熱と黄色や緑色がかった鼻水が続く、10日以上全く症状の改善がない、など症状が持続する場合は受診が必要です。こうした症状は急性細菌性副鼻腔炎によって生じている可能性があり、治療が必要です。

気管支炎

感染によって気管支に炎症を起こしている状態で、原因となる病原体は主にウイルスです。かぜから連続した疾患であるため咳症状が主体です。初期には乾いた「コンコン」という咳が多く、次第に痰がからむような「ゴホゴホ」という湿った咳になっていきます。解熱後も2週間程度は痰のからんだ咳が続くことがありますが、去痰薬などの対症療法で自然に軽快します。

細気管支炎

最初は発熱、鼻水などの風邪症状から始まりますが、炎症が肺の手前の細気管支まで進むことで生じます。激しい咳、ヒューヒューゼイゼイという喘鳴が特徴的で入院が必要になることもあります。原因ウイルスは様々ですが、最も多いのはRSウイルスです。治療は酸素投与、吸入など症状に対する対症療法を行います。

肺炎

感染によって肺に炎症を起こしている状態で、原因となる病原体はウイルスや細菌です。気管支炎と同じくかぜの延長線上にあり、かぜをこじらせた状態と考えてよく、予防は困難です。呼吸がきつい(努力呼吸)、低酸素血症が見られるなど、全身状態が悪いときは入院による治療が必要になります。

咳喘息

ヒューヒューゼイゼイという喘鳴はなく、咳が続く状態であり、こどもでは診断が難しいこともあり、頻度はは少ないとされています。夜中や明け方に咳がひどくなり、悪化すると咳で何度も目覚めてしまうこともあります。喘鳴を伴わない咳が持続し、気管支拡張薬が有効であることで診断され、治療は喘息に準じて行われます。

気管支喘息

喘息発作はダニ、ホコリなどのアレルゲンなどによる刺激によって気道が収縮し、咳や痰、ヒューヒュー、ゼーゼーといった喘鳴などを生じている状態です。お子様の気管支喘息はアレルゲンを吸い込むことで生じるアレルギー反応が気道で慢性的に起こることが原因です。気道の慢性的な炎症により、気道が過敏になっているため、アレルゲンの暴露以外でも、風邪などの感染症や運動、受動喫煙、時にストレスなど精神的な要因でも発作が生じることがあります。こうした発作が起こった際に症状を抑える治療に加え、気道の炎症を治す根本的な治療を行うことで、お子様の気管支喘息の多くは成人前に治せるようになってきています。発作を起こさなくなってからも炎症がなくなるまで治療を地道に続けると共に、アレルゲンに触れる機会をできるだけ減らす環境調整も重要です。

市販薬を自己判断で服用
するのは危険な場合も

咳は呼吸器に入り込んだ有害物質や痰などを体外へ速やかに排出するための正常な防御反応です。必要があって生じている咳を市販薬で止めてしまうと病原体の排出が滞って病気の悪化を招き、完治までに余計な時間がかかってしまうこともあります。咳が続く場合には、当院を受診して原因を調べ、適切な治療につなげることが重要です。

季節の変わり目の咳

季節の変わり目には、幼稚園や保育園、学校などで季節性の風邪が流行りやすい傾向があります。また、ちょっとした刺激で咳が出やすい方は、季節の変わり目になると症状が重くなることもよくあります。
さらに、季節の変わり目には、乾いた「コンコン」という咳から始まって、鼻水や鼻づまり、痰がからむような湿った「ゴホゴホ」という咳になるという経過を辿ることもあります。昼間は咳がほとんど出ず、夜中や朝方になると咳きこむことがあり、咳で目覚めてしまう、咳きこんで吐いてしまうなどの症状を起こすこともあります。
季節の変わり目にこうした症状がある場合は、早めに受診してください。

咳がある時の自宅での
対処法

部屋の湿度を保つことが重要です。加湿器や濡れタオルなどで部屋の湿度を保ち、咳が出る場合には冷たい水を少しずつ、こまめに何度も飲むようにします。なお、ご家族の禁煙も必要です。

発熱がなく咳が続く場合

こうした咳はウイルス感染などによって生じていることが多いですが、肺炎や百日咳、マイコプラズマ感染症などでも発熱を起こさず咳だけを生じる場合があります。ウイルス感染の場合は、抗生物質は効果がなく、痰を出しやすくする薬・鼻水を抑える薬、咳止め薬、空気の通り道である気管支を広げる薬など、対症療法を行ってつらい症状を緩和させます。なお、細菌感染が疑われるケースや、細菌による二次感染の可能性がある場合には、抗菌薬を処方しています。

こどもの咳に関するQ&A

昼間は咳が出ず、夜中や明け方に咳が出るのはどうしてですか?

呼吸や消化をはじめ、人間が無意識に行っている機能は自律神経によってコントロールされています。自律神経は活動している間に交感神経が優位になり、休息している間に副交感神経が優位になります。睡眠中は副交感神経が優位になり、気道が狭まりやすいので咳が夜中に出やすくなります。他にも、肺に近い気管支は細く繊細であり、ちょっとした刺激でも脳の咳中枢に伝えて咳が出ます。夜中は、布団の目に見えないホコリをはじめとした細かいハウスダストを吸い込みやすいことから、咳が出やすくなるとされています。また、鼻から内側を通って鼻水がのどに流れ込む後鼻漏も夜中に起こりやすく、それによって咳が出ることもあります。こうした複数の要因が重なることで、夜中や明け方に咳が出やすくなります。

乳幼児の咳が続き、受診して治療を受けても改善しません。どうしたらいいですか?

咳の治療は、地道に長く続けることで少しずつ改善するケースが多く、何度もぶり返しながら改善することもあります。当院では、病気や症状、治療に関して長期的な展望と短期的な予測を含めたわかりやすい説明を行っています。お子様の病気や症状を単に治すだけではなく、保護者の方のお悩みや不安にもしっかり寄り添ってサポートしています。咳の症状は苦しそうで見ているだけでもつらいことがあると思いますが、適切な治療をしっかり続けることが重要です。お悩みや不安がありましたら、遠慮なくご質問ください。

こどもがひどく咳き込んでえずき、嘔吐することもあります。昼間は元気ですが受診した方がいいですか?

夜中にひどい咳が出ても、昼間あまりにも元気で受診しなくてもいいのではとお悩みになる方は少なくありません。吐きやすい傾向があるお子様の場合、ちょっとした咳で吐いてしまうことも珍しくありません。ただし、咳き込む症状は、気管支喘息や百日咳、気管支炎、肺炎、クループ症候群など適切な治療で症状が改善する可能性がありますので、できるだけ早く受診してください。特に問題がなくても対症療法で症状を改善することで質の高い睡眠を得られるようになり、健やかな発育や発達につながることも期待できます。気になる咳がありましたら、原因をしっかり確かめるためにもお気軽にご相談ください。

咳だけが続いていて、熱などがない場合、市販の咳止めを飲ませても大丈夫でしょうか?

咳だけが続いている場合も、原因となる疾患がある可能性が高く、適切な治療が必要なケースもあります。市販の咳止めは原因疾患を治す効果はありません。また、咳は異物を排出するための重要な防御反応ですから、原因がわからないまま咳を無理矢理止めてしまうと病気の悪化につながることもあります。さらに、原因によっては市販の咳止めでは十分な改善効果が得られないケースもあります。 咳が続く場合は受診して原因を確かめ、適切な治療を受けるようお勧めしています。

長期間続く咳の原因疾患にはどんなものがありますか?

長い期間、咳の症状が続く主な疾患には、気管支炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎などがあります。また、早急な治療が必要な百日咳やマイコプラズマ肺炎でも咳の症状が続きます。さらに風邪による発熱などが治った後も、咳の症状だけが長く続くこともあります。稀な病気としては、先天性異常や免疫不全によって繰り返し生じる呼吸器感染症や心臓の異常によって咳症状が長く続いていることもあります。 咳以外に症状がない場合も、咳が1週間以上続く場合には早めに受診することが重要です。

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